工業用オーブン:焼成ムラを防ぎ、品質を安定化
クッキーやビスケットといった製品は、工場で巨大な「工業用オーブン」を使って大量に生産されます。
このオーブンは、長いベルトコンベアの両端から生地の投入と製品の取り出しを行うトンネルのような構造になっています。
課題:見えないオーブン内部の不具合
このような巨大なオーブンでは、内部の加熱ヒーターやバーナーに不具合が生じると、製品に焼きムラができてしまい、最悪の場合、大量の製品が規格外(不良品)となってしまいます。
しかし、高温で稼働しているオーブンの内部状態を正確に監視し、不具合の箇所を特定することは非常に困難でした。
解決策:「オーブンプロファイリング」による熱の状態の可視化
この課題を解決するのが、シスル・サーマル・プロファイリング社が提供する「Voyager(ボイジャー)」という計測装置です。
この装置を生地と一緒にベルトコンベアに乗せてオーブン内を通過させることで、庫内の温度や熱流束(ねつりゅうそく=熱の移動量)の変化を詳細に記録。これを「オーブンプロファイリング」と呼びます。
右側:対流熱流とそう熱流の計測の為の黒と銀のステッカー。
左側:FHF05:15x30 Sサイズ
Photo: Thistle Thermal Profiling Ltd.
上図はシスルのサーマル・プロファイリング・ボイジャー。右側では、黒と銀のステッカーが熱流センサーを覆っているのがわかる。黒いステッカーは全熱流束の値を示し、銀色のステッカーは対流の値を示す。
Voyagerに搭載された熱流束センサーは、製品に熱がどのように伝わっているかを正確に捉えます。例えば、写真の右側の製品に見える黒と銀のステッカーは、それぞれ「放射と対流を合わせた全ての熱流」と「対流による熱流」を個別に測定するためのものです。
効果:オーブンの異常を迅速に検知し、コストを削減
オーブンプロファイリングによって得られた熱流束と温度のデータを分析することで、加熱が弱い、あるいは強すぎる箇所、つまり故障したヒーターやバーナーの位置を迅速に特定できます。
これにより、不具合の原因究明にかかる時間が短縮され、オーブンのダウンタイム(停止時間)と不良品の発生を最小限に抑え、コスト削減に大きく貢献します。