スマート農業:電源不要の「熱電池」で温室の省エネと収量アップへ
大規模な温室栽培は、作物の安定生産に不可欠ですが、一年を通して最適な温度を保つためには多くのガスや電気を消費するという課題を抱えています。
この農業における省エネという大きな課題に対し、オランダのスタートアップ企業「Thermeleon(サーメレオン)社」が、ポンプも電気も使わない画期的な「熱電池」というアイデアを製品化しました。
解決策:昼の熱を蓄え、夜に放つ「熱電池」
この「熱電池」は、日中に温室内にこもる余分な熱を吸収して蓄え、気温が下がる夜間にその熱をゆっくりと放出する、非常にシンプルな仕組みです。
これにより、夜間の暖房に使うガス消費量を10~30%も削減。さらに、窓を閉めておく時間が増えるため、CO2の排出抑制や作物の収量アップにも繋がると期待されています。
2023年には、オランダの有名な生産農園であるコッパート・クレスの温室で、この熱電池を実際に設置した大規模な性能テストが行われました。
最適化の鍵:「熱流束センサー」による性能評価
この革新的な熱電池の性能をさらに高めるために、開発の過程で「熱流束(ねつりゅうそく)センサー」が重要な役割を果たしました。
Thermeleon社は、熱電池が蓄熱する際に「どれくらいの熱量が、どれくらいの速さで内部に伝わっているか」を精密に計測するために、Hukseflux社の熱流束センサーを使用しました。
結果:データに基づいた製品改良で、持続可能な農業に貢献
熱流束センサーから得られる正確なデータによって、熱電池の素材や設計といったパラメータを最適化し、最も効率よく熱を蓄えられる条件を見つけ出すことができます。
このように、革新的な省エネ製品の開発・改良の現場において、熱流束という指標の測定は欠かせないものとなっています。この技術は、エネルギー問題や食糧問題に貢献する、持続可能な未来に向けた取り組みの一つと言えるでしょう。