【製品選定ガイド】工業用途の熱流束センサー選び方|高温・高熱流束環境向け
はじめに
工場設備、燃焼試験、火災研究といった工業分野の熱測定は、非常に高い温度や熱流束、屋外環境など、センサーにとって極めて過酷な条件下で行われます。そのため、汎用的なセンサーでは対応できず、目的に特化した堅牢な工業用熱流束センサーの選定が不可欠です。
本記事では、Hukseflux社が提供する工業用センサーを例に、「どのような用途に、どのセンサーを選べばよいか」が分かるように、3つのアプリケーションカテゴリに分けて解説します。
工業用センサーの基本動作原理
これから紹介するセンサーはすべて、内部のサーモパイルがセンサーを通過する熱流束を検出し、その温度差に応じて微小な電圧信号を発生させることで測定を行います。
まず、測定したい対象は以下のどれにあたるかを確認します。
A. 火炎・フレアの放射熱を監視したい
B. 高熱流束下での材料試験や耐火試験を行いたい
C. 工業炉やプラント設備の壁面などから失われる熱を測定したい
A. 火炎・フレアの放射熱監視向けセンサー
熱流束が主に放射で構成される、屋外での火炎モニタリングや防火デモンストレーションなどに適しています。センサー表面は放射を効率よく吸収する黒色コーティングが施されています。
| 製品シリーズ | 主な用途・特徴 | 動作温度範囲 | 計測レンジ (W/m²) | 感度 (典型値) V/(W/m²) |
|---|---|---|---|---|
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HF02
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警報システムとの連携が主な用途。設定値を超えるとアラームを出力します。 | -30~+100 °C | 0~15 x 10³ | 0.3 x 10⁻⁶ |
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HF03-LI19
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ポータブル式の読み取りユニット付きセンサー。短時間の火災試験や、他の放射モニターの性能検証に使われます。 | -40~+40 °C | 0~10 x 10³ | 0.1~0.7 x 10⁻⁶ |
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HFS01
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水冷式の高熱流束センサー。放射だけでなく対流熱流束も測定可能です。 | -30~+650 °C | 0~800 x 10³ | 9 x 10⁻⁹ |
B. 高熱流束下での各種試験向けセンサー
材料の耐火・可燃性試験など、極めて高い熱流束環境での使用を想定した水冷式のセンサーです。
・ガードンゲージ(GGシリーズ)
熱伝導率の高い銅をベースとし、金属のみで構成されているため非常に高い温度に耐えることができます。
・シュミット・ボエルターゲージ(SBGシリーズ)
ガードンゲージのフォイル技術とサーモパイル技術を組み合わせています。火災試験や、コーンカロリメーター試験の校正基準器として使われます。
| 仕様 | 最大温度範囲 | 計測レンジ (W/m²) | 感度 (典型値) V/(W/m²) |
|---|---|---|---|
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GG01
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-30~+800 °C | (250, 500, 1000) x 10³ | (24, 15, 8) x 10⁻⁹ |
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SBG01
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-60~+200 °C | (5~200) x 10³ | (0.25~0.20) x 10⁻⁶ |
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SBG04 (校正基準器)
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-30~+600 °C | 100 x 10³ | (0.12~0.23) x 10⁻⁶ |
C. 設備・プロセスの熱管理向けセンサー
主に壁面などを通る伝導性熱流束を測定し、設備のエネルギーバランスや壁の熱伝導率を評価するために使用されます。トレンド監視や比較測定に適しており、水や高圧にも耐えるIP67等級の頑強な設計です。
| 製品シリーズ | 主な用途・特徴 | 動作温度範囲 | 計測レンジ (W/m²) | 感度 (典型値) V/(W/m²) |
|---|---|---|---|---|
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IHF01
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測定レンジが非常に広い。感度は低いですが、極めて高い熱流束の測定が可能です。 | -30~+900 °C | (-1000~+1000) x 10³ | 9 x 10⁻⁹ |
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IHF02
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高温環境で動作しつつ、高い感度を両立しています。 | -30~+900 °C | (-100~+100) x 10³ | 250 x 10⁻⁹ |
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HF05
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測定対象が高温でない場合に経済的な選択肢となります。 | -30~+170 °C | (-6~+6) x 10³ | 15 x 10⁻⁶ |
まとめ
工業分野の熱流束測定では、まず「何を、どのような環境で測定したいか」を明確にし、それに合ったセンサータイプを選ぶことが重要です。各センサーの特性を理解し、最適なモデルを選定することで、過酷な環境下でも信頼性の高いデータを得ることが可能になります。
より詳細な情報や、お客様の用途に最適なセンサーの選定については、お気軽にクリマテックまでお問い合わせください。
この記事について
本記事は、熱流束センサーのリーディングメーカーであるHukseflux社の公開技術情報に基づいております。その情報をもとに、同社の日本国内正規代理店であるクリマテック株式会社が、日本のユーザー様向けに独自の解説、および国内での具体的な活用シーンや知見を加えて編集しました。
この記事の編集者
Hukseflux社製品の日本国内代理店として20年以上にわたり担当。メーカーの最新技術情報と、日本の製造業・研究機関における数百の導入事例に基づき、お客様の課題解決に最適なソリューションを提案している。メーカー本社の技術トレーニングを毎年受講し、常に最新の知見を取り入れている。