熱流センサの正しい設置方法
熱流束測定の精度は、センサの設置方法に大きく左右されます。このページでは、測定誤差の主な原因と対策、そしてお客様の測定条件に応じた最適な取り付け方法を解説します。
1. 【最重要】設置における注意点:空隙(エアギャップ)
正確な測定を行う上で、最も注意すべきはセンサと対象面の間に生じる空隙(空気の層)です。
なぜ問題か?
空気は熱抵抗が非常に大きいため、わずかな隙間でも断熱層として機能し、正確な熱の流れを妨げます。Huksefluxのセンサ(HFP01)の場合、0.05mmの空隙で熱抵抗が約35%も増加するという試算もあります。
基本的な対策
設置面を清掃し、凹凸をなくす。
熱伝導グリスや接着剤などで隙間を埋める。
センサを対象面にしっかりと密着・固定する。
2. 取り付け方法の選定
取り付け方法は、①温度範囲と②測定期間の2つの要素を考慮して選定します。以下の表から、お客様の用途に適したオプションをご確認ください。
| 取り付けオプション 【詳細一覧表】 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 製品 | 測定時間 | 定格温度範囲(℃) | 機能 | 備考 |
| パワーストリップ | 一時的、簡単に取り外し可能 | 15~40 | 固定、空隙埋め合わせ | |
| グリセリン | 数分 | 〜120 | 空隙埋め合わせのみ | - 手軽な試作のための充填のみ - 安全で水に容易に溶ける |
| 歯磨き粉 | 数日 | 40 | 空隙埋め合わせのみ | - 充填のみ - 片面テープなど他の固定具と併用する - 水性 |
| 両面テープ | 2週間、取り外し可能 | 40 | 固定、空隙埋め合わせ | ー |
| 熱伝導グリス | 数週間 | ~177 | 空隙埋め合わせのみ | - 充填のみ - 片面テープなど他の固定具と併用する - シリコンオイル系 |
| シリコン接着剤 | 恒久的 | -45~200 | 固定、空隙埋め合わせ | - 市販のシリコン接着剤の大半が適している |
| 片面テープ | 一時的または恒久的 | -260~150 | 固定のみ | - 固定のみ - 熱伝導グリスなど他の充填剤と併用する |
| 磁石 | 一時的または恒久的 | ~500 | 固定のみ | - 磁気面のみ - オプションの「マグネット付きフレーム」付きセンサーは溶接されたネジを使用する場合のみ |
| タック溶接ネジ | 一時的または恒久的 | -260~1000 | 固定のみ | - フランジ付きセンサー用 - 固定のみ - シリコン、グラファイトシート材、セメントなどの他の充填剤と併用する |
| ボルト | 一時的または恒久的 | -260~1000 | 固定のみ | - フランジ付きセンサー用 - 固定のみ - シリコン、グラファイトシート材、セメントなどの他の充填剤と併用する |
| シリコンガスケット | 一時的または恒久的 | 〜200 | 空隙埋め合わせのみ | - 充填のみ - ボルトやネジなどの他の固定具と併用する |
| グラファイトガスケット | 一時的または恒久的 | 〜500 | 空隙埋め合わせのみ | - 充填のみ - ボルトやネジなどの他の固定具と併用する |
| 高温用セメント | 一時的または恒久的 | 〜1400 | 固定、空隙埋め合わせのみ | ー |
3. 製品別の設置例
事例①:壁面など常温環境での設置
壁の断熱評価などで使用されるHFP01熱流センサの場合、上記の表にある「両面テープ」を使った設置が推奨されます。安定した長期測定を手軽に行えます。
事例②:工業炉など高温環境での設置
900℃までの高温に対応するIHF02工業用熱流センサの場合、フランジを利用した「ボルト/ネジ」による固定が基本です。穴あけが難しい場合は、オプションの「マグネットフレーム」も利用できます。
4. さらに精度を高めるために
正確な測定を行う上で、最も注意すべきはセンサと対象面の間に生じる空隙(空気の層)です。
曲面への設置
測定面が曲面の場合は、FHF05シリーズのような柔軟性のあるセンサを使用することで、表面にフィットさせ、空隙を減らすことができます。
放射熱を測定する場合の注意点(光学特性)
放射が主な熱伝達である環境では、センサ表面の色や材質(光学特性)を、周囲の測定対象の表面と合わせることが理想的です。例えば、黒い塗装面を測定する場合は、センサ表面も黒くすることで、より正確な測定が可能になります。
5. まとめ
正確な測定を行う上で、最も注意すべきはセンサと対象面の間に生じる空隙(空気の層)です。
- 設置時の「空隙」を徹底的に排除すること
- 測定の温度と期間に応じた最適な取り付け方法を選ぶこと